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東京高等裁判所 昭和45年(行ケ)2号 判決

一 請求原因一ないし三の各事実、すなわち、本願発明についてされた特許出願から本件審決の成立に至るまでの特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨並びに本件審決の理由の要点は、いずれも当事者間に争いがない。

二 そこで、原告が請求原因四において主張する本件審決の取消事由の存否につき判断する。

(一) 一致点の認定について

成立に争いのない甲第四号証によれば、引用例には(別紙図面第1表参照)、ケーブル心線の識別方式として、短点、長点又はこれらの組合わせからなる符号を使用し、第一種心線ないし第四種心線相互にそれぞれ符号を異ならせるとともに、右各種心線のいずれにおいても、線番1ないし10の心線の符号と線番11ないし20の心線の符号とを異ならせてそれぞれ二つの線番群に分別し、また、符号の色は、線番1ないし20を線番五個毎に黒と赤を交互に異ならせ、絶縁被覆の色は、線番1から20まで線番順に青、桃、緑、鳶、鼠の五色を順次繰返すことにより各線を個別に識別するものが記載されていることが認められる。一方、成立に争いのない甲第二号証によれば、本願発明の明細書には、本願発明の実施例として(別紙図面第3図表示)、第一種線心ないし第三種線心それぞれの符号を異ならせて相互に分別するとともに、右各種線心のいずれにおいても、線番1ないし10、線番11ないし20、線番21ないし25の各心線の各符号を異ならせて三つの線番群に分別し、また、符号の色は、線番1ないし25まで順次線番五個毎に赤と黒を交互に異ならせ、絶縁被覆の色は、線番順に青、桃、緑、鳶、鼠の五色を順次繰返すことにより各線を個別に識別するものが示されていることが認められる。

以上認定の本願発明の実施例及び引用例のものは、いずれも、絶縁被覆の色とは異なる色の符号の種類により、第一種線心ないし第三種線心(第一種心線ないし第四種心線)の各種線心(各種心線)を相互に分別するとともに、同種線心(同種心線)においても、一定の線番毎に符号を異ならせて複数の線番群を分別し、符号を同じくする一つの線番群にあつては符号の色及び絶縁被覆の色により各線を個別に識別するという基本的構成において一致していることが明らかである。本願発明の右実施例が右基本的構成において、本願発明の要旨とする構成をすべて備えていることは明らかであるから、引用例の構成もまた本願発明の要旨とするところと差異がないものである。

なお、前掲甲第二号証によれば、本願発明の明細書には、他の実施例として、原告主張のとおり、各種線心に共通して線番1ないし25を線番五個毎に符号の種類を異ならせて(したがつて、線番を同じくする各種線心は異種線心であつても同一の符号が付せられている。)、五つの線番群に分別し、符号を同じくする一つの線番群においては、符号の色を、第一種線心は赤、第二種線心は黒、第三種線心は白、第四種線心は紫として所属する各種線心を分別し、絶縁被覆の色を線番の順に青、桃、緑、鳶、鼠として線番順位を示すことによつて、各線を個別に分別する構成のもの(別紙図面第2図参照)や、第一種線心ないし第三種線心の相互間においてそれぞれ符号の種類を異ならせるとともに、右各種線心それぞれにおいても、線番1ないし25を線番5個毎に符号を異ならせることによつて、合計一五の原告主張の意味における線番群に分別し、同一符号を有する一つの線番群においては、絶縁被覆の色を線番の順に青、桃、緑、鳶、鼠とし、絶縁被覆の色のみによつて各線を個別に識別しうる構成(別紙図面第3図参照)、右と同様に線番群を分別するが、同一符号を有する一つの線番群においては、符号の色を線番の順に青、桃、緑、鳶、鼠とし、符号の色のみによつて各線を個別に識別しうる構成(別紙図面第4図参照)のものが示されていることが認められる。そして、本願発明の要旨における「符号の種類により線番群並びに各種線心それぞれの種類を分別する」の意味を、仮りに原告主張のとおり、異種線心相互間において必ず符号を異ならせるとは限らず、同一種線心においては、一定の線番毎に符号を異ならせることにより、同一種線心におけるそれぞれの種類の識別を可能にするものであると解しても、前記のとおり、引用例もまた同一種心線において、複数の符号を使用し、一定の線番毎に符号を異ならせているから、原告主張の意味における「符号の種類により線番群並びに各種線心それぞれの種類を分別する」ことが可能な構成である点において本願発明との間に差異がなく、また、本願発明の要旨が、原告主張のとおり、「符号の色又は絶縁被覆の色」によつて各線を個別に識別しうる場合を含むとしても、「符号の色及び絶縁被覆の色」によつて各線を個別に識別する場合を排除しているわけでないことは、本願発明の特許請求の範囲の項の記載及び前記認定の実施例からも明白であつて、引用例は、少なくとも「符号の色及び絶縁被覆の色」によつて各線を個別に識別するものであることにおいて本願発明と一致するというべきであり、したがつて、本願発明と引用例との間の一致点に関する本件審決の認定に格別の誤りは認められない。

(二) 相違点の判断について

前掲甲第四号証によれば、引用例は、短点、長点又はこれらの組合わせ等からなる八種類の符号を使用し、すでに認定したとおり、これらの符号によつて、各種心線相互間を分別するとともに、同一種心線においても複数の符号を使用して一定の線番毎に符号を異ならせ、線番群を分別するものである。これに対し、前掲甲第二号証によれば、本願発明の明細書には、短点、長点のほか、文字、数字、記号、図形やこれらの組合わせ等からなるものを符号として使用し、各種線心相互間においては、線番が共通であれば符号を同一にする場合と引用例と同様に符号を異ならせる場合とがあるけれども、同一種線心においては、一定の線番毎に符号を異ならせ、符号の種類により線番群を分別する実施例が示されていることが認められるところ、当事者間に争いのない本願発明の要旨においては、符号の種類につき格別限定されていないから、本願発明は、識別用符号として、短点、長点のほか、文字、数字、記号、図形やこれらの組合わせ等を適宜用いるものを含むものと解される。そこで、本願発明と引用例とを対比してみるに、本願発明は、識別用符号の種類の範囲を引用例におけるより広く示していること及び異種線心間において同一の符号を有する場合がありうることにおいて、引用例と異なつているが、両者とも同一種線心において複数の符号を使用し、一定の線番毎に符号を異ならせるものであり、符号の種類により線番群を分別することにおいて一致していることは明らかである。そして、文字、数字、記号、図形やこれらを組合わせたものを符号として使用し、事物や概念の集合、群又は特定の個を識別することは、従来から、科学技術の分野一般において広く採用されてきた周知の事項であり、また、本願発明と引用例記載のものにおける符号の用い方には、前記のとおり、基本的な相違がないから、本願発明のような符号の種類の範囲及び符号の用い方は、当該技術分野における常識に徴すれば、すでに引用例から示唆されているか、容易に推考しうるところといつて妨げがない。

したがつて、この点に関する原告の主張は理由がなく、本願発明と引用例との相違点に関する本件審決の判断にも誤りはない。

(三) 本願発明の作用効果について

前掲甲第二号証によれば、本願発明は、その構成から、ケーブル又は束線における多数の心線を迅速かつ容易に識別することができるという作用効果を奏し、製造価額も低廉であるため、多量のケーブル等を必要とする装置の建設費用の節約、工期の短縮にも役立つとされていることが認められる。一方、前掲甲第四号証によれば、引用例のケーブル心線識別方式においても、とくに訓練や経験を必要とすることなく多数の心線を容易に識別することができ、製造がきわめて容易で安価であるとされていることが認められ、引用例のものも、多量のこの種ケーブルを必要とする装置の建設費用の節約、工期の短縮にも役立つというべきである。したがつて、本願発明の作用効果とされているものは、すべて引用例においても収めうるものであり、特段の作用効果であるとはいえないから、本件審決が本願発明の作用効果につき論及しなかつたとしても、これを違法とすることはできない。

(四) 結論

以上のとおり、原告の主張する取消事由はいずれも理由がなく、本願発明が引用例から容易に推考しうるものとした本件審決の判断に誤りはない。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

ケーブルまたは束線等の各心線一本一本の絶縁被覆上に、一定の間隔で繰返し施される絶縁被覆の色とは異なる色の符号の種類によつて、線番群並びに各種線心それぞれの種類を分別し、符号の色、絶縁被覆の色等によつて、各線を個別に分別することを特徴とするケーブルまたは束線

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